BIOGRAPHY バイオグラフィー

アーネスト・グリーン(=ウォッシュト・アウト)によるミュージックは、何ものにもましてドリーミーだ。リスナーのマインドを別のステージに迷い込ませるというアイデアを持ってして、彼はこのセカンド・アルバムで大きく前進した。8月13日(日本は8月7日)にサブ・ポップよりリリースされる『パラコズム』で、このジョージアをベースとするミュージシャンは、アルバムのタイトルにもなった事象を探求する。パラコズムの中で人々は想像上の世界を構築するのだ。このコンセプトは、J.R.R.トールキンの「中つ国(ミドル・アース)」やC.S.ルイスの『ナルニア国物語』、アウトサイダー・アートの代表的な作家ヘンリー・ダーガーの『非現実の王国で』で描かれる架空の世界と同種のものだ。
 
 『パラコズム』の歌詞は、確かに音楽に求めらる大きな要素でもあるエスケーピズム(逃避主義)のアイデアで覆い尽くされている。一方これが、グリーンが過去のウォッシュト・アウトの作品のモードや方法から間隔を置く要因ともなった。ただ誤解してはならない。彼はコンピューターやシンセを捨てたわけではない。彼は音のパレットを拡大するという意識的な決定をしたのだ。その結果、彼は50以上もの異なる楽器をアルバムの中で使用することとなった。その中でも重要な楽器となったものは、メロトロン、チェンバリン、ノヴァトロン、オプティガンといったオールド・キーボードだった。前世期の中頃に作られ、あらかじめレコーディングされたサウンドで、半音階のそれぞれのキーにサンプルされた個々の音によって構成されるこの楽器(ビートルズの「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」のフルートの音がその好例だろう)によって、グリーンは自身のサンプリングの技術を駆使することができ、新たな創造性を導き出す柔軟性を得ることにもなった。
 
「僕はソングライターとして成長したんだ。だからある時点でよりアレンジメントにこだわるようになったんだ。けど、サンプリングだけでそれを実現するのは難しいんだよ。で、こうした古いキーボードは僕にとって幸運な媒体となったんだ。音はちょっとすり切れた感じだよね。古い音のサンプリングみたいなクオリティーだ。けど、これらを使用することによって、より柔軟性を持てるんだよ。だってサンプリングと違って演奏することができるからね。全てのキーボードの音や、ストリングス、ハープ、ヴィブラフォンの音も、全部この古い楽器の音なんだよ」とグリーンは語る。
 
2009年、EP『ライフ・オブ・レジャー』のリリースにより、ジョージアで静かで孤独な暮らしを送っていたグリーンは時代の寵児となってしまった。大学を出ても職が見つからずその暇な時間を利用して作られた彼の曲は、瞬く間にインターネットを介して全世界に広まった。その年のイヤーポールを決める投票で、このEPはどの音楽メディアでも高い評価を獲得。ローファイでチルアウトなフィーリングを持った彼の曲はチルウェイヴと呼ばれ、史上初めてネット上で起きたムーヴメントとなり、数々のフォロワーを生んでいった。また同EPに収録された曲「フィール・イット・オール・アラウンド」に対するリアクションは日に日に大きくなり、今でもコメディ番組『Portlandia』のオープニング・クレジットの音楽として使われ、先頃おこなわれたRedditによる「ベストサマーソング」投票では1位を獲得している。
 
 2001年7月、グリーンはファースト・アルバム『ウィズイン・アンド・ウィズアウト』をリリース。アニマル・コレクティヴ『メリウェザー・ポスト・パヴィリオン』、ナールズ・バークレイ『セント・エルスホエア』、ディアハンター『ハルシオン・ダイジェスト』他で知られるプロデューサー、ベン・アレンとレコーディングされたこのアルバムは、全米チャートで26位のヒットを記録。その後のツアーは2年にも及んだ。その間、2011年5月には「FREAKS MUSIC FESTIVAL '11」、7月には「フジロック・フェスティバル '11」、2012年1月にはジャパン・ツアーの為、三度の来日公演もおこなっている。
 
 『ウィズイン・アンド・ウィズアウト』のツアー後、彼と妻ブレア(ウォッシュト・アウトのライヴ・メンバーでもある)は巨大都市アトランタの喧騒から逃れる為、アセンズの郊外へ引っ越すことを決めた。田舎に住むことはまるで促進剤のようなもので、グリーンは簡単に現実世界から逃避し、自分の創作の世界に入ることができた。彼はほぼ6か月の間、毎日アルバムの制作に没頭したのだ。その結果、前作でも一緒に作業をしたベン・アレンとアトランタでアルバムの制作を完全に終了させるまでに、グリーンはその3分の2をアセンズで既に完成させていた。
 
「この前のアルバムはある意味ミニマルでモノクロなものだったよね。そうした潜在意識が新しいアルバムのサウンドの大きなインスピレーションとなったんだ。だから、僕は始めからこのアルバムをオプティミスティックで、真昼のアルバムのようなサウンドにしたかったんだ。前のアルバムはちょっとノクターナルな様に感じたんだよね。だから、美しい自然の中で外にいるようなイメージを持ってアルバムを作ったんだよ」とグリーンは語る。
 
 リスナーはまず『パラコズム』がオーガニックなシンセの音でシームレスに繋がっていることに圧倒されるだろう。これはウォッシュト・アウトの過去の作品にも関連し、グリーンの商標でもあるドリーミーさを再定義している。またそれぞれの曲もシームレスで、ソニック・ストーリーを語る為につながっているのだ。またアレンのメイズ・スタジオでレコーディングされた生のドラム、ベース、ギターによって、このアルバムは新たな段階にも進むことになった。ヴィンテージの楽器を使う等、グリーンは逆行傾向にあったにもかかわらず、アルバムは今まさにこのスタジオで作られ、鳴っているように感じることができるのだ。そして、過去のどんなエレクトリックなアルバムよりも人間味を持つアルバムとなったのだ。例えば、「グレイト・エスケイプ」の温かくレイドバックしたグルーヴを聴いてみるといい。また、過去のウォッシュト・アウトの作品と同じようにトロピカルなフィーリングを持つヒプノティック)催眠作用のある)な素晴らしいファースト・シングル「イット・オール・フィールズ・ライト」を聴いてみてもいい。
 
「アルバムの制作をスタートさせた時、最初に手を付けた曲の一つが「イット・オール・フィールズ・ライト」だったんだ。アルバムの中での僕のフェイヴァリット・ソングだよ。だって最初に僕がアルバムに対して持っていたヴィジョンに最も近い曲だからね。僕にとって『パラコズム』は始めからどんなサウンドにしたいかを決め込んで作った最初のアルバムなんだよ」とグリーンは語る。
 
 また、遊んでいる子供の声や鳥の鳴き声とともに、『パラコズム』にはシンガロング的な要素もたくさん含まれている。美しい「ドント・ギヴ・アップ」、ジャングルの要素を持った「オール・アイ・ノウ」(まるでスミス時代のジョニー・マーがパッション・ピットとコラボレーションしたようだ)、ロマンチックなポップ・チューン「フォーリング・バック」を聴いてみるといい。
 
 そして、どの曲にも関わらず、アルバムには美しい瞬間がたっぷりと詰まっている。その中でも最も感動的な瞬間は、コクトー・ツインズ風の「ウェイトレス」とアルバムの最後の曲「オール・オーヴァー・ナウ」の中で、彼が自身のシューゲイズを反映させた時であろう。
 
 そのゴージャスでアップリフティングな内容を持って、『パラコズム』は2013年の夏の一枚となるであろう。そう、このアルバムさえあれば、あなたは今年の冬を乗り切ることができるのだ。そしてタイトルの通り、このアルバムはあなたに一つの約束をする。別の、そしてより良い世界にリスナーを連れて行ってくれるのだ。

NEW RELEASE

2013.08.07 Release

PARACOSM(パラコズム)

商品番号:YRCU-98008
本体価格:2190円+税

2012.01.11 Release

AMOR FATI / アモール・ファテ

商品番号:YRCG-90071
本体価格:1524円+税

2011.07.06 Release

WITHIN and WITHOUT

商品番号:YRCG-90060
本体価格:2190円+税

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