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Emmy the Great

Emmy the Great
 
二年前にリリースされ大きな賞賛を獲得したデビュー・アルバム『ファースト・ラヴ』に続くエミー・ザ・グレイトのセカンド・アルバム『ヴァーチュー』がリリースされる。ファースト・アルバムとは違った環境でレコーディングされた『ヴァーチュー』は、彼女がある無神論者と婚約した後に書き始められた。しかし、その無神論者がエミーを教会に置き去りにした時(婚約が成就しなかった時)、全く違ったものへと物語りは変化していった。
 
エミー・ザ・グレイトはシンガーソングライター、エマ・リー・モス(Emma Lee-Moss)が2006年の4月にデビュー・シングルをリリースした時から使っている名前だ。香港のチャイニーズ・スクールでただ一人の欧米人(エミーは中国とイギリスのハーフ)として育った彼女は、ウィーザー、スマッシング・パンプキンズ、レモンヘッズといった中国のドメスティックのアーティストのものではない音楽を聴くために、いつも電車でタワーレコードまで通っていた。UKのアンチフォーク・シーンを代表するシンガーソングライターとして注目を浴びた彼女は、直ぐに音楽業界の注目の的となった。しかし、レコード・レーベルの社長や経営者による商業ライターとのコラボレーション案や、「もっとコーラスを入れよう」みたいなあさはかな提案を投げかける不快な人達に嫌気がさし、彼女は、自分自身で全てのことをおこなっていく決意をする。 
「(こうした苦い経験から)私は本当に落ち込んで混乱してしまったから、もうやめてしまおうと思ったの。けど、Diane Cluck やThe Mountain Goatsといったアーティストをみてわかったの。私が外部の色んな人から教えられてきたことは全部ゴミだったということを。私が好きだったアーティストは皆、ある時期に自分自身にストライキをおこしていたことを思い出したの」 
こうして2007年の8月にセルフ・リリースしたEP『My Bad』の成功を通して、彼女のデビュー・アルバム『ファースト・ラヴ』は、完全に自己資金でつくられ、セルフ・プロデュース、しかもセルフ・リリースされる運びになった。これは彼女を別な色で染めようとした思慮のない業界関係者達へのエミーからの答えであった。2009年2月(日本は9月)に自身のレーベルClose Harbourからリリースされたアルバムは大きな評価を獲得。シングル「ファースト・ラヴ」はiTunes(UK)のシングル・オブ・ザ・ウィークにも選ばれ、スマッシュヒットを記録。また同年、グラストンベリー(ジョン・ピール・ステージ)や朝霧JAMでもプレイした。
 
エミーは、セカンド・アルバムの制作にあたっても、当然のごとく、レコード会社の手を借りず自らの力でアルバムを作り上げよう決意していた。それを実現させる為、Pledge Music(http://www.pledgemusic.com/projects/emmythegreat)を介して、ファンからアルバムの制作費を募るファンド形式でのアルバム制作を実行。既にUK、日本、香港で大きなファンベースを築いていた為、何の問題もなく、アルバムの制作費は確保でき、プロデューサーにギャレス・ジョーンズ(ジーズ・ニュー・ピューリタンズ、デペッシュ・モード、グリズリー・ベア 他)を迎えてレコーディングを開始することとなった。 
アルバムの曲を書くにあたり、エミーは、御伽話や神話から幾つかのシンボル(髪はのびきって植物が生い茂ってしまっている状態で、家や塔の中に閉じ込められている人々等)を拝借することにした。そして、現代社会の中で変化してしまった御伽話や神話のシンボルに取って代わるアイコンを曲に付け加えていった。それは、産業構造物、きのこ雲(原爆雲)、ロンドンのトレリック・タワー(恐怖のタワーという異名を持つ高層住宅)といったものだ。このアルバムは、エミー自身の音楽に付加された個人的な神話のコレクションのようなものだ。彼女はアルバムを “中世風デジタル”というジャンルに位置づけている。 
我々は、しばしば起きていることと眠っていることの相違を理解できない。夢はどのようにして私達にも物事を教え、メッセージを与えようとするのか。アーキタイプ(原型的)な物語の中で歌はどのように生存するのか。エミーは、潜在意識の中で働き続けるアーキタイプ(原型的)な物語を誰もが持っていることに気付いていた。そして、婚約という奇妙な孤立感と、その後に訪れる暗黒の時間の可能性について言及する鮮明な夢をみていたのだ。 
また、もし美徳(Virtue)を保つことができるなら、女性だけが神話の森の中で上手くやっていけることを、エミーは理解していた。ある種の安心感を持ちながら、スウィートだけどメスの様に鋭い率直な若い女性として、冷静に分析的な視点で彼女は曲を書いていたが、森の中で二度迷ってしまった。最初は彼女が婚約して花嫁になろうとしていた時(女性としての役割がやってきて彼女を飲み込んでしまった時)。そして、ステッチがバラバラになった時、第二の時が来た。エミーの婚約者はある日、二人のフラットから去ってしまい、戻ってくることはなかった。彼はキリスト教に急に改宗してしまい、イギリスからいなくなってしまった。エミーは婚約解消の混乱の中にいた。親の家がある国に行き、そこに閉じこもってしまった。ちょっとおかしくなっていた、と彼女は語る。自分自身を取り戻すため、聖者やアーキタイプ、そして民話についての本を読みふけった。ただ、彼女は、アルバムを自分について歌ったアルバムにはしたくはなかった。なぜならアルバムは、起こってしまったこと、そして全てからエミーを助け出してくれるものである必要があったから。 
『ヴァーチュー』はロンドンとサセックスで制作された。エミーは、フルバンドでスタジオの中でアルバムを制作するよりも、彼女の昔からの音楽的なコラボレーター、ユアン・ヒンシュルウッド(Euan Hinshelwood)と作品を作り上げていくことにした。コクトー・ツインズやスザンヌ・ヴェガ、そしてマーガレット・アトウッド (カナダの女流作家)、アンジェラ・カーター (イギリスの女流作家、ジャーナリスト、編集者、翻訳家)、マリナ・ウォーナー (イギリスの女流作家、評論家、歴史家)からの影響のもと、エミーは今までとは違った声でバッキング・ヴォーカルを書き、ユアンは奇妙でアンビエントで、ちょっとひねった雰囲気のあるギター・パートを作り上げた。ニュートラル・ミルク・ホテルのアルバム『イン・ザ・エアロプレイン・オーヴァー・ザ・シー』や、ジャネール・モナエ の『ジ・アーチアンドロイド』のように、エミーは、目の前に呼び出そうとした世界をより強く表現するため、このアルバムにはキャストが必要であるとも考えた。またアルバムの制作中、エミーはバングルスのようなガーリー・ポップや南太平洋の宗教的な聖歌を聴き、ユアンはポスト・パンクやブルガリアの聖歌に熱中するようになった。また二人は、夜には、エンヤの曲を聴いたりもした。
 
エミーは北イングランドをツアーした時、原子力発電所の写真を撮った。そして、曲を書き始めた時、その写真を壁に貼っていたのだが、そこに写っていたキノコ雲が大きくなっているように感じた。「確かに私はそうした原子力発電所を作った人類の一人だ。けど、何時でも何処にでも、世界の終わりを恐怖に思っている若者が常に存在していると思う」と彼女が語るように、「Dinosaur Sex」では、原子力発電所が震えて漏れ出し木の葉は全て落ちていく、そんな状況下での未来の世界が歌われている。「A Woman, A Woman, A Century Of Sleep」は、ローズマリーが育っている部屋に独りで暮らし、いつのまにか自分もローズマリーの一部になって緑化し茎が骨になっていくてる女性についての歌だ。(エミーや他の多くの女性にもあてはまることだが)移り気なプリンセスであるギリシャ神話の虹の女神イリスのことを歌った「Iris」。パティ・スミスのある曲でうたわれていた『Blessed Among All Women』からインスピレーションを得て書かれた「Paper Forest (In The Afterglow Of Rapture)」。ギリシャ神話のトロイアの王女カサンドラにかけ、カサンドラ・コンプレックス(真実を告げ確実に起きる未来の事を予言しているにも関わらず、誰にも信じてもらえない状況)について歌った「Cassandra」。幻肢についての歌「Creation」。アルバムの曲を書き始めた時にエミーの叔母が亡くなり、その後、彼女の家を借りて暮らしていた時に書かれた「Sylvia」。シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』をもじった「Exit Night / Juliet's Theme」。人類の地図を持っていると思っている宣教師について歌った「North」。トレリック・タワー(1960年代、建設費用や時間の削減や人口密度の増加による住宅需要の高まりを満たすことを目的として作られたロンドンの高層住宅トレリック・タワー。しかし、多くの世帯を1つの建物に集める事で犯罪は増加し、地域の治安は悪化。この地区で強姦やドラックの売買が増え、建物のセキュリティーは機能を無くしていった)についての歌った「Trellick Tower」。
 
プロデューサーのギャレス・ジョーンズは、エミーのロマンティジズムを尊重した。一方、サウンドを豪華なものにするよりも素のままで響かせたい、という彼女の思いも理解していた。エミーも、怖がることなく物事に直面し、常に頭を高く上げ、思ったことや音楽でしか表現できないことを伝える為には、自分自身が解放されなくてはならないと理解していた。自分が「人」であると感じさせてくれたのがこのアルバム、とエミーは語る。『ヴァーチュー』は、エミーも含め、皆に起こることの記録だ。神話の記憶の中で永遠に消え去りたくない人。わめいて、耐えて、生き残りたい人。『ヴァーチュー』は我々に戦闘服を「曲」という形で提供してくれる。エミーは我々皆の為にその服を着ている。 
エミー自身のレーベルClose HarbourからBMGにライセンスをするという形をとって、2011年6月に『ヴァーチュー』はUKでリリースされる。
 
【オフィシャルHP】 
http://www.emmythegreat.com/
 
【MYSPACE】 
http://www.myspace.com/emmythegreat
 
【BIG NOTHING】
http://bignothing.net/emmythegreat.html

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