Nathan Nicholson - Vox, Rhythm Guitar
Todd Howe - Lead Guitar
Adam Harrison - Bass
Piers Hewitt - Drums
彼らにとって最も成功した年となった2010年を経て、ロンドンを拠点とする四人組みロック・バンド、ザ・ボクサー・リベリオンが、3枚目のアルバムをリリースする。伝説的なプロデューサー、イーサン・ジョンズ(Ethan Johns)(Kings of Leon、Ryan Adams他)とともに制作された『ザ・コールド・スティル』は、バンドの定義とも言って良い“インディペンデント”を具体的に表現する、マスタークラスのパフォーマンスと洗練されたパフォーマンスが詰まった作品となった。
米テネシー州出身のネイサン・ニコルソン(Nathan Nicholson)、オーストラリア出身のトッド・ハウ(Todd Howe)、イギリス出身のアダム・ハリソン(Adam Harrison)とピアース・ヒューイット(Piers Hewitt)の4人は、このアルバムのリリースとともに新しい音楽の旅に出る。イギリスのピーター・カブリエルのスタジオ、Real World Studiosでレコーディングされたこの作品は、絶大な評価を獲得したセカンド・アルバム『ユニオン』をフォロー・アップする作品となる。『ユニオン』は、セルフ・リリース、かつデジタルのみでのリリースで、ビルボードのアルバム・チャートのTop 100に初めてランクインした歴史的なアルバムだ。また、iTunesの米/英のアルバム・チャートではTop 5のヒットを記録し、アルバムがリリースされた2009年のiTunesの“オルタナティヴ・アルバム・オブ・ザ・イヤー”を獲得している。また昨年、ドリュー・バリモア/ジャスティン・ロング主演の映画、『Going The Distance』(邦題『遠距離恋愛 彼女の決断』。日本公開2010年10月。2011年2月にはDVD発売)に「If You Run」を書き下ろし、重要な役どころとして映画にも出演したことは記憶に新しい。
この彼らのサード・アルバム『ザ・コールド・スティル』は確実に世界中の音楽ファンに受け入れられるだろう。壮大なのに親密、息を呑むような展開、強力なギター・リフ、胸を引き裂くような歌詞・・・・・・。このアルバムにはザ・ボクサー・リベリオンのトレードマークが全て詰まっている。アルバムは最も選ばれたクリエイティヴな存在のプロデューサーの一人、イーサン・ジョンズによりプロデュース&ミックスがおこなわれた。
「イーサンは僕らがプロデューサーとしてずっと夢見てた人なんだ。だからサード・アルバムのプロデューサー候補のリストには彼の名前しかなかったんだよ。僕らは他の誰とも仕事はしたくなかったし、幸運にも、デモの最初の段階から彼はかかわってくれたんだ。僕らは自然だけど発展するようなサウンドを作りたいと思ってたんだけど、イーサンならそれが出来ることはわかっていたんだ」とトッドは語る。
「イーサンと仕事を出来たのは夢のような経験だった。基本的に『ユニオン』はセルフ・プロデュースだったので、プロデュースを誰かにお願いするのはバンドとして大きな決断だった。円形に向かい合って演奏できるようにセット・アップすることからイーサンはレコーディングを始めたんだ。互いに向き合って演奏することなんてこれまでなかったんだよ。バンドのクリエイティヴなプロセスに彼は新しい方法を導入してくれたんだ。今までの中でベストだと思わせてくれるアルバムを作る手助けをしてくれたよ」とネイサンは語る。
バンドのプロローグの話を始めよう。ザ・ボクサー・リベリオンは、2001年にロンドンで結成された。メンバーは今も変わらないネイサン・ニコルソン(Vo、G、Key)、トッド・ハウ(G)、アダム・ハリソン(B)、ピアース・ヒューイット(Dr)の4人。2000年、ネイサンは母の死後アメリカを離れロンドンに移り住み、オーストラリア出身のトッドと出会いバンドを結成し、そこにアダムとピアースが加わった。当初はThe Slippermenというバンド名で活動をしていたが、成功することはなく、バンド名をザ・ボクサー・リベリオンに変更。サウンドも大きく変化し、徐々にファンを獲得していった。2003年の6月、Play Louderのコンペティションの結果、グラストンベリーのニュー・バンド・テントでプレイし、その直後、アラン・マッギーのレーベル、ポップトーンズと契約。2005年の5月にファースト・アルバム『エグジッツ』をリリースする。NME誌は「このバンドは、あなたの人生を変える」とアルバムを大絶賛。Fly誌とMusicOMH誌も「完璧(なアルバム)」と評し、アルバムに収録された「Watermelon」はバンドの代表曲となり、同曲はRazorlight、The Libertines、The Buzzcocks他とともに、The Football Factoryのサントラにも収録された。
しかし、ここからバンドの不幸は始まる。彼らの所属レーベルであったポップトーンズが閉鎖。アルバムが発売されてから僅か2週後のライヴで、バンドはレーベルからドロップしたことをアナウンスしなくてはならなかったのだ。当然、約束されていた巨大なプロモーションはついには行われることなく、バンドは再びデイ・ジョブの日々に後戻りすることとなってしまう。この時からバンドはレコード・レーベルとの契約を持たないバンドとなったのだ。しかい、アルバムは口コミで人々の評判となっていく。その結果、イギリスやヨーロッパでのライヴは常にソールド・アウトという現象を引き起こすこととなり、そのギャラでバンドは活動を維持していく。そして、Editors、Lenny Kravitz、Gary Numan他のオープニング・アクトとしてもプレイし、水面下でバンドのファン・ベースは拡大していったのだ。
ライヴ活動とともにバンドは自己資金で新しいアルバムの制作にも入っていった。そして2009年1月(11日イギリス/13日アメリカ)、セカンド・アルバム『Union』をiTunesの独占販売という形でデジタルのみでリリース。当時の彼は全く資金がなく、フィジカル(CD)でアルバムをリリースすることは出来なかったのだ。こうしてデジタル・リリースされたアルバムからのリード・トラック「Evacuate」は、iTunesの“フリー・シングル・オブ・ザ・ウィーク”に選ばれ(レコード・レーベルと契約のないバンドが選ばれるのは前例のないこと)、1週間で56万ダウンロードを記録。その直後、アルバムはUS/UK両国のiTunesのチャートのトップ5にランクインし、最終的に、UKのiTunesのトップ100アルバム・チャートで最高位4位を、同オルタナティヴ・チャートでは2位(1位はKings of Leon)を獲得。USではMy Morning Jacketを蹴落として、USのiTunesのオルタナティヴ・チャートで1位を獲得。ある時点では、ColdplayやKings of Leonよりも売れたアルバムとなったのだ。またアルバムはデジタルのみでビルボードのトップ100アルバム・チャートの82位にランクイン。これはレーベルと未契約のバンドとしては初めての快挙であった(UKではフィジカルのリリースがなかった為、ナショナル・チャートに選出される資格を持たなかった)。この音楽業界の常識を完全に覆す快挙に、レディオヘッドやアークティック・モンキーズといったバンドも大きく賛辞した。
この後、バンドは米、英、日他、各国をツアーし、活動の幅を広げていった。また、偶然にも映画関係者がロサンゼルスで彼らのライヴをみ、その結果、ドリュー・バリモア/ジャスティン・ロング主演の映画、『Going The Distance』(邦題『遠距離恋愛 彼女の決断』。日本公開2010年10月。2011年2月にはDVD発売)に「If You Run」を書き下ろし、重要な役どころとして映画にも出演することとなった。映画に曲を書き下ろし、劇中で彼らの他の曲が使用されるのはもちろん、バンドの実生活と重なり合う主役の二人を繋ぐ重要な役どころとしての出演。バンドは撮影中に実際にライヴで演奏し、シーンに説得力を持たせることに成功した。ナネット・バースタイン監督は、「彼らのサウンドはとても新鮮で、しかも、とても映画的であるの。彼らの音楽を聴いた瞬間に、私は彼らの歌を使うシーンを思い浮かべるとこができた」と語っている。
バンドは、今作のリリースにあたっても、(当然、メジャー/インディを含めたくさんの誘いはあったものの)自らの意思でレーベルとは契約を結んでいない。アルバムはバンド自身のレーベル、Absentee Recordingsよりリリースされる。『ザ・コールド・スティル』は、バンドと次の章となるアルバムだ。過去はもうただのプロローグでしかない。