率直に言って、このバンドについて、私はあまりわからない。例えわかったとしても、話すべきかどうか。何故なら、Isletは、全ての面から説明を避けるようなバンドだからだ。中毒性のあるインストゥルメンタルのポスト・ロック、スティーヴ・ライヒのような破壊的なドラム・デュオ、リズミカルに叫ぶノイズ・・・、こうしたこのバンドの要素は、一般的なレベルからは遠く離れていて屈折している。またバンド自身も、私が彼らについて説明することを望んでいない。MySpace、Facebook、Twitterといった供給過剰に対する完全な反抗から、Isletは、ちょっと後ろに下がって自分たちの周りに盾をつくる、という成熟した決断を下しているからだ。私が鈍いと思うなら、“Islet”とグーグルにタイプしてみるといい。期待される一般的なものは何も見つけられないだろう。MySpaceやFacebook、そしてバンドのサイトもないのだから。ひとつだけ“This Is Islet”というサイトを発見できるかもしれない。これは、バンドの音楽を愛し、オンラインでのバンドの情報の不足に驚き、それらを一つにまとめる為に、ファン数人によって作られたサイトだ。
たとえバンドが自分達のことを秘密にしていても、そのサウンドとライヴには強い自己認識が存在する。けど、自分達のやることの全てを意図的におこなっている、というわけではない。どちらかといえば、物事をあまりに真剣に捉えることは馬鹿げている、とバンドは考えているように思える。他のクールなバンドと同様、彼らは自分達の音から、さほど大きくない自己世界を作り上げているのだ。
ステージで、バンドは楽器をチェンジしながら演奏する。またステージのあらゆるところをドラムのように叩く。それは楽器を演奏する個人が集まっているというよりも、メンタルに楽器を演奏する一つの物体のように思える。ライヴに集まるオーディエンスは畏敬の念を持ってバンドを見つめ、ドラムキットをメンバーの三人が取り囲むように叩き、ドラムキットに座る残りの一人は、キーボードをプレイしながらドラムを演奏する。他のバンドのようにマイクの前に立って歌うこともあるが、“ロック”的な美学とはかけ離れた歌/叫び声/不満の声をあげながら、ステージ上をさまよい、オーディエンスの中に入っていったり、ドラムキットの後ろにいったり、果てはトイレにまで行ったりする。なんて素晴らしいんだ!