木根尚登20周年記念ベスト 提供楽曲集「キネメロ」
木根尚登
発売日:2012年07月04日
商品番号:YRCN-95202
本体価格:
3,143円(税込)
木根尚登ソロデビュー20周年記念、4作連続ベストアルバム第3弾である本作は、 渡辺美里や宇都宮隆などのアーティストに提供してきた楽曲のセルフカバー。 ピアノのみのシンプルなサウンドで、秀逸な木根メロディを堪能してください。
「さくらの花の咲くころに」
渾身のメロディを提供できた自信はありましたが、渡辺美里さんの詞と歌により、自信は誇りになりました。素晴らしい歌の一翼を担う事ができた誇りです。しかも、92年の美里さんのアルバム『HELLO LOVERS』ではエアプレイやスティーリー・ダンで知られるジェイ・グレイドンのプロデュースによるリメークバージョンを、2000年の『うたの木 Gift』では新日本フィルハーモニー交響楽団によるバージョンを聴く事ができるのは、美里さんが長く愛してくれ、長く歌い続けてくれているからです。作曲者冥利に尽きます。
─渡辺美里アルバム『ribbon』(1988年発売)収録曲─
「PURE SNOW」
人づてに聞いた話ですが、シングル発売当時、「ゆう子ちゃんのボーカルと木根のメロディがすごくはまっている」と小室(哲哉)くんが絶賛してくれたそうです。あの桑田佳祐さんまでもこの曲を聴きが絶賛してくださったとの事ですが、こちらは人づての更に人づてなので、真偽の程は定かではありません(笑)。ただ、この曲のシングルと配信の合計が累積30万超という話は事実らしいので驚いています。『キネメロ』アレンジャーの嶋田陽一さんによると、この曲はクラシックの印象派のイメージだそうです。
─佐々木ゆう子シングル「PURE SNOW」(1999年発売)─
「あてのない闇」
T.UTUとしてソロ活動をしていたウツが、本名の宇都宮隆として活動を始めるにあたり提供したバラードです。でも、だからと言って特別な事はしていません。むしろ、新たな旅立ちだからこそ平常心でオーソドックスに作りました。ただ、どこか感傷的になったのを思い出します。高校時代に銀座NOWのオーディションを2人で受けたときからSPEEDWAYでもTMでも、それまで20年以上も僕が書いた曲をウツが歌うとき、常に僕も同じ場所にいたのに、この曲は僕の知らないところでウツが歌ってくれると思うと…。
─宇都宮隆アルバム『easy attraction』(1996年発売)収録曲─
「LOVE SONGは歌わない」
TMNのレコーディングやツアーをとおし、カツGの歌唱力も素晴らしい太く伸びる声質も知っていたから、自粛なしでメロディを書いた曲です。カツGとの思い出をあげたら切りがありませんが、この曲を聴くたび95年夏の野外イベントRacy Rockfesのキラキラした景色が甦ります。T.UTUもaccessも一緒だったあの日々です。あのときステージでは僕のサポートとしてキーボードを弾き、楽屋ではカツGともUNOをしていた嶋田陽一さんが『キネメロ』でこの曲のアレンジをする事になったのはめぐる縁のような気がしています。
─葛城哲哉アルバム『DOUBLE DEALER』(1993年発売)収録曲─
「Melody」
初めてアイドルのシングルA面に採用された思い出の曲です。TM NETWORKのアルバム『CAROL』のレコーディングでロンドンに滞在していたとき、日本にいるスタッフから電話がかかってきました。あのときの「決まったよ」という弾む声は今も忘れません。喜びを分かち合える仲間がいるとは素晴らしい事です。浅香さんのミニアルバム『HERSTORY』では「スターシップ」「雨が雪に変わった夜に」も採用されました。ところで『キネメロ』ではこの曲がある意味目玉です。嶋田陽一さんいわくモーツァルト風のアレンジには度肝を抜かれました(笑)。
─浅香唯シングル「Melody」(1988年発売)─
「何故…」
100曲を越える提供曲の中でも、僕が作詞作曲をしているのは、この曲を含め確か3曲程度だったはずです。作詞は、当時木村由姫さんをプロデュースしていた大ちゃんからの依頼でした。木村さんが10代の新人である事を考え、作詞家的な歌詞ではなく、本人が書いていると間違われるくらい素朴な歌詞を心がけた記憶があります。でも、木村さんは引退されたらしく、この曲を思い出す事もなかったけど…。08年の事。僕のライブにゲスト出演してくれた凛さんがこの曲を歌いたいと言ってくれました。僕の知らないところで、僕も忘れていた曲が愛されていた事がたまらなく嬉しかったのを覚えています。
─木村由姫アルバム『First Season』(1999年発売)収録─
「あなたが近くに」
この曲を提供した90年頃、僕の中の小室みつ子さんはアサイラム・レコードのイメージでした。アサイラムとは、僕も好きだったイーグルス、リンダ・ロンシュタット、ジャクソン・ブラウン、ジョニ・ミッチェルなどが所属していた、70年代のウェストコースト色の濃いレコード会社です。だから、僕なりのアサイラムなメロディを書いたつもりです。今聴き直すと、この曲の傾向が95年頃に自分のソロ楽曲として書いた「ブリキのメロディー」や「心の旅先」につながっている事に気づきます。曲は足跡ですね。
─小室みつ子アルバム『Say You Want Me』(1990年発売)収録曲─
「永遠より長いキス」
デビューからプロデュースした初めてのシンガーが日置明子さんでした。デビュー曲は、アニメ映画『ユンカース・カム・ヒア』EDテーマで、TMのカバーでもある「Winter Comes around」と決まっていました。そのカップリングに選ばれたのが、きたるべき1stアルバムのために作っていた中の1曲、この曲です。ところが、アレンジャーの清水信之さんが編曲をしながらこの曲に惚れ込み、シングル曲にすべきだと、担当ディレクターにスタジオから電話で直訴してくださったそうです。かくして2ndシングル表題曲になったのでした。
─日置明子シングル「永遠より長いキス」(1995年発売)─
「あしたの私に会いに来て」
原曲のアレンジは当時のTKファミリーというか、当時の流行になっています。でも、僕は流行を意識しないで作曲しました。鈴木亜美ちゃんはすでにシングル初登場1位が当然の人気アイドルだったからこそ、奇をてらわず、いいメロディを提供しようと思いました。訊いた事はないけど、作詞の小室みつ子さんも同じ気持ちだったのかもしれないと思っています。その時代の10代に必要以上に媚びていない歌詞だから。今の10代の女の子にも響く歌詞だと思います。小室みつ子ならではの清潔感のある歌詞が好きです。
─鈴木亜美アルバム『infinity eighteen vol.1』(2000年発売)収録曲─
「LULLABY~夢のままで~」
ガットギターとストリングだけのシンプルなアレンジを想定し、実際にガットギターを弾き囁くように歌いながら作った曲です。結果的にも原曲は僕の想定に近いアレンジになっています。『キネメロ』の中では、男が綴った男の気持ちは、この曲だけです。作詞は栄作くんですが、不倫を思わせる内容になっています。その際どい歌詞と男臭いとは言えない僕のメロディとがうまく中和しているのではないでしょうか。俳優・吉田栄作のイメージをことさらに意識せず、誰が歌ってもいい曲を目指したのが良かったみたいです。
─吉田栄作アルバム『THE LONG & WINDING ROAD』(1992年発売)収録曲─
「恋と愛の距離」
女優の田中裕子さんへ提供した曲です。プロデューサーは沢田研二さんでした。という事で、この曲が縁でお2人の披露宴に招待していただいたし、沢田さん直々に「いい曲をありがとうございました」と言っていただきました。いい思い出です。それから約20年後、沢田さんのコンサートの楽屋におじゃますると、この曲の事を覚えていてくださって感激でした。だから、沢田さんに教えてもらった気がします、たとえ知る人ぞ知る曲であっても、認めてくれる人や愛してくれる人の中で消えない曲を書く事も作者の喜びだと。嶋田さんによると、イタリアの香りを意識したピアノだそうです。
─田中裕子アルバム『都会の猫たち』(1989年発売)収録曲─
「嵐のち晴れ」
椎名へきるさんのプロデュースを始めとき、ニューシングルを4ヵ月連続でリリースしました。その第2弾シングル曲です。この曲を聴くと、当時は車の助手席に小型キーボード、鞄の中に小型レコーダーを常備していたのを思い出します。ひらめいたメロディを逃さないためでした。その努力の甲斐あってか、今聴き直しても納得できるメロディです。『キネメロ』レコーディングで初めてこの曲を聴いた嶋田さんからも、素晴らしい転調だね、とほめてもらいました。06年にへきるさんと結成したアコースティックユニットひだまり。その1stシングルにも「嵐のち晴れ ~そして…ひだまり。~Version」が収録されています。
─椎名へきるシングル「嵐のち晴れ」(2001年発売)─